「10畳という部屋は、職人にとってその腕の見せ所が凝縮された空間なんです」と、内装業に携わって三十年のベテラン職人は語り始めました。6畳間のようなコンパクトな部屋とは違い、10畳の広さになると、壁の一面が長くなるため、いかに真っ直ぐ、そして継ぎ目を目立たせずに貼るかという技術がより厳しく問われるからです。彼が最もこだわるのは、壁紙を貼る前の下地作りの工程です。古い壁紙を剥がすと、下地の石膏ボードには段差やネジの跡が残っています。これをパテで埋め、サンドペーパーで削って、指先で触れても全く凹凸を感じないレベルまで平滑に整えます。10畳の広い壁に光が差し込んだ時、わずかな下地の狂いも陰影として浮かび上がってしまうため、この準備作業に全体の時間の半分以上を費やすことも珍しくありません。また、10畳の部屋は家族の団欒の場となることが多いため、隅々の収まりにも細心の注意を払います。コンセントプレートの周りやカーテンレールの付け根など、細かな部分のカッティングの正確さが、最終的な部屋の「清潔感」を決定づけると言います。職人の視点から相場価格について尋ねると、彼はこう答えました。「安さを売りにする仕事は、どうしてもこの下地処理の時間を削らざるを得ない。でも、私は十年後もお客さんに喜んでもらえる壁を作りたいんです」。そのためには、適正な工賃をいただき、最高の糊と丁寧な時間をかけることが不可欠だと言います。10畳の壁紙を張り替えるということは、単に紙を新しくするのではなく、その部屋で過ごす人の生活の背景を新しく作ることに他なりません。職人が一枚のクロスを貼り終え、最後にローラーで継ぎ目を押さえる時の真剣な眼差しには、そこに住む人の日常を支えるという強いプライドが込められています。価格の裏側にあるこうした職人のこだわりを理解した上でリフォームを依頼することは、住まいを愛する第一歩になるのではないでしょうか。
内装職人が語る10畳のクロス張替えに込めるこだわり