内装リフォームの世界で二十年以上、数えきれないほどの現場を経験してきましたが、お客様に一番お伝えしたいのは「クロスの仕上がりは、貼る前の準備で九割が決まる」という真実です。多くの方は、カタログの中からどのクロスを選ぶかという華やかな部分に注目されますが、私たち職人が最も神経を使い、最も時間をかけるのは、古いクロスを剥がした後の「下地処理」の工程です。特にリフォームの場合、新築とは異なり、下地の石膏ボードには経年による歪みや、古い糊の跡、さらにはボード自体の剥がれや傷が必ず存在します。これらの不具合を無視して新しいクロスを貼ってしまうと、どんなに高価で美しい壁紙を選んだとしても、光が当たった瞬間に凸凹が浮き出てしまい、残念な仕上がりになってしまいます。具体的には、古いクロスを剥がした後に残る裏紙の浮きを丁寧に取り除き、ボードの継ぎ目や凹みに対してパテを塗り込み、それを乾燥させてからサンドペーパーで平滑に削る作業を繰り返します。この作業をどれだけ入念に行うかによって、クロスの表面に現れる平滑さが全く変わってくるのです。また、湿気が原因で下地が傷んでいる場合には、防カビ処理を施したり、必要に応じてボードの一部を張り替えたりといった判断も必要になります。私たちプロは、ただクロスを貼る作業員ではなく、壁のコンディションを診察し、最適な治療を施す医師のような役割も担っていると考えています。リフォームの現場では、予期せぬトラブル、例えば剥がしてみたら下地がボロボロだったということも稀にありますが、そうした際に適切な処置を提案できるかどうかが職人の腕の見せ所です。お客様には、ぜひ見積書の「下地処理費」という項目の重要性を理解していただきたい。そこには、数年後も剥がれず、美しい状態を維持するための職人の知恵と手間が凝縮されているからです。地味で目立たない工程ではありますが、この基礎がしっかりしているからこそ、新しいクロスが持つ本来の美しさが最大限に引き出されるのです。
プロが語るリフォームの成功を左右するクロスの下地処理